【相続トラブル】「本当の相続人」じゃなくても不動産はもらえる?
【相続トラブル】「本当の相続人」じゃなくても不動産はもらえる?
―最高裁『遺言無効確認等請求事件』(令和6年3月19日判決)の衝撃
このブログで分かること
自分が相続人じゃなかったら、不動産を返さなきゃいけない?
長年住んでたら、それだけで「自分の物」になることがある?
遺言があっても“時効”で勝てるの?
令和6年最高裁が下した注目判決の意味とは?
事件のあらまし ―「遺言があった」でも争いに
今回ご紹介するのは、「遺言無効確認等請求事件」という裁判です。
登場人物は以下のとおりです。
①被相続人(Bさん):亡くなった方。不動産の持ち主
②養子(被上告人):Bさんを1人で相続したと信じた人
③甥たち(上告人ら):Bさんの遺言で財産を分けてもらえるはずだった人たち
Bさんは、生前に「甥と養子に等しく遺産を分ける」と書かれた遺言を作成していました。
しかし、亡くなったあと、養子だった人が遺言の存在を知らずに相続登記を済ませ、
自分ひとりの持ち物として不動産を占有していたのです。
争いのポイント:「20年間住んでたらもう自分の物?」
後から遺言が見つかり、「不動産の持分を返してほしい」と甥たちが裁判を起こしました。
でも、養子側はこう主張しました。
「もう20年近く、自分が相続人だと思って住んできた。不動産は時効で自分のものになっているはずだ。」
このように、「相続人じゃなかったかもしれないけど、長く住んでいた」という事実が、
どこまで通用するのかが、今回の争点でした。
最高裁の判断:「時効は別の話。成立すれば有効」
令和6年3月19日、最高裁は次のように判断しました。
「たとえ相続人でなかったとしても、20年間“自分のもの”として
平穏に・公然と占有していれば、民法162条の時効取得が成立する。
相続人の請求が時効消滅してなくても、それとは関係なく時効取得はできる。」
つまり、
相続回復請求権(民法884条)と、
所有権の時効取得(民法162条)
は別の制度であって、両立するという結論です。
実務でどう活きる?注意点と対策
状況 実務上のポイント
遺言があるのに不動産が他人名義 すぐに行動しないと、20年で「他人のもの」にされるリスクあり
相手が善意で登記+居住 時効取得を成立させてしまう可能性がある
自分が相続人のはずなのに登記されていない まず「占有年数」を確認。20年経っていたら危険信号
まとめ:「遺言があっても、20年の壁には勝てないことも」
この「遺言無効確認等請求事件」は、
相続トラブルにおいて“時間”が持つ法的な意味の大きさをはっきり示しました。
<参考条文>民法第162条(所有権の取得時効)民法第884条(相続回復請求権)
遺言があっても、長年放っておけば、
「本当の相続人」が取り返せなくなることもある。
相続で心当たりのある方は、
「そのうち…」ではなく“今”の確認・対処をおすすめします。
岩手県、盛岡市、矢巾町、北上市の物件をお持ちの方、お困りの際はぜひAsobo不動産にご相談くださいね!