実際の裁判例から学ぶトラブル回避術
敷金や保証金、ちゃんと返ってくる?
~実際の裁判例から学ぶトラブル回避術~
こんにちは。宅建士の沼崎です
今日は、よくある「退去時のお金のトラブル」について、実際に裁判で争われたケース(=判例・事例)をわかりやすくご紹介します。
「事例」とは、簡単に言うと「こんなことが裁判で問題になりましたよ」というリアルなトラブルの実例です。
難しい話に聞こえるかもしれませんが、なるべくかみくだいてお話しますのでご安心ください♪
【事例1】敷引(しきびき)って何?説明されてなかったけど…
▶ 福岡簡易裁判所・平成22年1月29日判決
ある賃貸契約で、敷金42万5000円を預けていた借主さん。
契約書には「敷引3.5ヶ月分」と書いてありましたが…
借主さん:「そんな大事な話、ちゃんと聞いてない!」
裁判所の判断は?
裁判所はこう考えました。
「特約(とくやく)は、ただ契約書に書いてあるだけではダメ。
借主さんに内容を説明して、ちゃんと理解してもらわなきゃ成立しないよ。」
つまり、
① 書いてある
② 説明した
③ 理解している
の3つがそろってはじめて、特約として有効と認められるんです。
このケースでは、借主さんへの説明が不十分だったため、敷引の特約は無効とされました。
さらに、貸主さんが「修繕費42万円分を請求!」と言いましたが、実際に借主の過失によるものとされたのはたったの1540円。
→ 結果、敷金のうち29万5960円が借主に返されました。
【事例2】長く住んでれば、全部“自然な劣化”になる?
▶ 東京地方裁判所・平成22年2月2日判決(公営住宅)
こちらは、区営住宅に11年間住んでいた方のケース。
保証金は31万4400円を預けていました。
退去後、貸主から未納家賃や修繕費の請求が…。
借主さん:「11年も住んだんだから、傷は全部“通常損耗”でしょ?」
裁判所の判断は?
「確かに時間が経てば劣化はある。でも、すべてが“自然な傷”とは限らないよ。」
具体的には…
フローリングのはがれ
襖(ふすま)の穴
台所器具の置きっぱなし
排水部品の紛失
壁に大量のフック跡
これらは通常の使い方では起きない“特別損耗”とされ、
→ 修繕費として29万5020円を借主が負担することに。
結果、未納賃料もあわせて総額43万4520円。
保証金を差し引いても足りず、返金は一切なしとなりました。
実務のポイントまとめ(判例から学ぶ)
特約の成立条件
契約書に書いてあるだけでは不十分
内容をきちんと説明し、借主が理解・納得していることが必要
通常損耗 vs 特別損耗
長年住んでいても、すべてが「自然な劣化」になるわけではない
傷や破損の原因(使い方)によっては、借主の負担になる
消費者契約法の適用
借主に一方的に不利な条件は、たとえ契約書にあっても無効となる場合あり
特に、説明不足・理解不十分なままの契約はトラブルの元!
沼崎からひとこと
退去時のトラブルは、実はとっても多いんです。
でも、契約時に「ちゃんと内容を聞く・理解する」「わからないことは質問する」ことができれば、防げることもたくさんあります。
これからお部屋を借りる方も、退去を考えている方も、
ぜひ今回の裁判事例=実際のトラブルの“答え合わせ”を参考にしてみてくださいね。
わからないことがあれば、いつでもお気軽にご相談ください♪
宅建士・沼崎でした☘️